────宮さま、何が貴殿をそこまで追い詰めるのですか。


「宮さま」と呼ばれた彼女の肩を抱き起こした女の人の顔が、少しだけ見えた。


長いまつ毛に優しげな伏せ目、薄い唇に小さな鼻。

「宮さま」と同じくらいに、とても綺麗な人だった。


────やめて、お願い泉ちゃん。貴女だけは、私の名前を呼んで。昔みたいに、どうか 。


酷く傷ついた顔をした彼女は、必死にそう訴える。

「泉ちゃん」と呼ばれた女の人は、困ったように微笑んだ。


────……志よう。志よう、私を見て。大丈夫だから。


志よう、とはきっと彼女の名前なのだろう。

名前を呼ばれた途端、赤ん坊のように安らかな安心した顔をした。



────私を嫌いにならないで。どうか私を許して。



お願い、そう言い志ようさんは「泉ちゃん」の手を固く握った。

そんな志ようさんを、彼女は優しく抱きしめる。



────どうして私が志ようを嫌いになるの。昔から変わらず、私は貴女の一番の親友よ。




綺麗な横顔。

私はその人を知っている気がする。


そうだ、その人は。