その日、不思議な夢を見た。

私は今よりももっと綺麗で、新しい畳の匂いがするかむくらの社を歩いていた。

何が何だかよく分からないまま、かむくらの社の廊下を歩く。


するとひとつの部屋に差し掛かった時、誰かの話し声が聞こえた。

綺麗な障子が貼られたその部屋は扉が少しだけ空いていて、何となくそこをのぞき込む。



────泉ちゃん。ごめんなさい。ごめんなさい、私はどうしたら。


誰かが泣いている。

橙色の着物を着た女の人だった。肩までの長さの短い黒髪に、白い肌。頬は朱墨のようにあかく染まって、夜空をすくったような瞳。

とても綺麗な人だった。



その女の人は、誰かに縋り付くようにして泣いていた。

相手も女の人だった。背中を向けているので、顔は分からない。




────宮さま、宮さま。どうか心を安らかに。お身体に障ります。

────ああ、泉ちゃん。私本当に。



まるで懺悔するように、何かから怯えるように、その女の人は顔を埋めて泣いていた。