乾いた音が弾けた。
その瞬間、合わせた指の隙間から琥珀色の光が弾けた。光は波紋を生み出し、草原をかける風のように波打ちながら広がると暗紫の空気を外側から包み込む。
暗紫を包み込んだ光はやがて風船の空気が抜けるように私を中心にして萎んでいく。
「何が、起きてるの……?」
やがて光は私の頭の上で拳ほどの大きさになるとすうっと落ちてきて、私の胸に収まった。
顔を上げて辺りを見渡す。
靄がかかった鳥居は本来の朱い色を取り戻し、今にも破れ裂けそうな音を立てていた護符は何事も無かったかのように静かになった。
もしかして、上手くいったの……?
皆を見た。息苦しそうに床に伏せていた皆の呼吸は穏やかなものになっていた。
ほっとしたのもつかの間、頭のてっぺんからさあっと体が冷たくなる感覚が走る。
まずい、と思うのも遅く、視界は反転して自分も床にころがった。
ばくん、ばくん、と心臓がうるさい。
やがて瞼が重くなり、頭の奥がぼんやりとし始める。
その時、突然目の前に紫色の袴が広がった。
誰かが自分の顔の前に立っているんだと、ぼんやりする頭で考える。
この人は、誰……?
薫先生、来てくれたの?
「────……お前」
誰かのその声を最後に、プツリと意識が途絶えた。