気合いを入れ直すように「よし」と呟いた。


家事を済ませ、お兄ちゃんの入院の準備や書類の準備と、もくもくと手を動かしやっと一息つける頃にはうんと夜が深まった夜中の3時頃だった。

暖かいお茶を入れてふう、と椅子に腰を下ろす。

ふと、視界の端に桃色の包みが入った。

あ、と手を伸ばす。

桃色のランチョンマットに包まれたそれは今朝お兄ちゃんが拵えてくれたお弁当だ。

そばには置き手紙があった。見慣れたお兄ちゃんの字で「おかえり」から始まって10行以上の長い文章。

思わずくすりと笑ってしまう。相変わらずお兄ちゃんらしいな。


お弁当箱を開けると、たこさんウィンナーにちくわの磯辺揚げ、きんぴらに、カボチャの煮付け、甘い卵焼き。ちょっと茶色っぽいけれど、どれも私が大好きなおかずだ。

運動会、遠足、試験、私が頑張らないといけない時の定番のお弁当だ。
ケースからフォークを取り出して、
「────っ、」そっとテーブルにフォークを置いた。


元気になったらまた沢山作ってもらえばいい。なのに、どうしても食べることが出来なかった。


フタをして冷蔵庫へ入れようと立ち上がったその時、

ヴンと音を当てて部屋の明かりが落ちた。