目が回る、息ができない、気持ち悪い。

苦しさに涙が滲んだ。涙なのか残穢のせいなのか、視界が歪んで前が見えない。



みんな気を失って倒れている。

助けを呼ぶのもこの状況を変えれる可能性があるのも私だけ。

なのに私は、何も出来ない。



情けない、悔しい。

弱い自分。

怖い、もう嫌だ、死にたくない。



その時、急にふと脳裏に文字が浮かび上がった。

まるで昔読んだことのある小説の一文をふと思い出すかのように、ふわりとその文字が浮かび上がってやがて鮮明に文章になる。


これは、祝詞だ。


知らない祝詞なのに私はそれを知っている、妙な感覚だった。

前にもこんなことがあった気がする。


そうだ、あれはかむくらの社の鎮守の森で、あやかしに会った時だった。