そこに広がっていたのは、確かに校舎の中にある廊下だった。けれど、廊下のずっと先まで続く何百もの朱い鳥居が、その場所を異空間にしていた。
その鳥居も暗紫の靄がかかって、神聖なもののはずなのに禍々しい。
太い注連縄がかけられたその鳥居には夥しい数の護符が貼られ、風もないのにまるで今にも剥がれそうなほどビシビシと音を立てて強くたなびいていた。
まるで鳥居のずっと先から強い風がふきつけるかのように、圧を感じる。
何よりも奥から溢れ出る、視界も空気も濁すほどの残穢がその場所の異様さを物語っている。
息をするだけでも、肺が刺すように傷んだ。
胃からものが逆流する感覚に咄嗟に口元を押えた。
けれど上手く息ができず、その場に踞る。
「巫寿……っ、息、こらえ、てッ!」
制服の袖で口元を覆った嘉正くんが、顔を顰めながら私の肩を支えてそう言った。
「おい、来光! 慶賀! しっかりしろ!」
泰紀くんが慌てたようにふたりの頬を叩く。
二人は完全に意識を失ったらしく、廊下に力なく倒れ込んでいる。
「か、嘉正くん……ッ、これ!」
「わからないッ、でも流れていた残穢の大元はこの先にあるみたいだ……ッくそ」
嘉正くんは膝に手を付きながら立ち上がると、ぐっと間を食いしばり柏手を打った。
濁った空気の中に、それは鈍く響く。