「ごめん……ちょっと、休みたい」


少し歩いてそう言ったのは慶賀くんだった。

青い顔をした慶賀くんは、その場に崩れ落ちるように座り込む。


「慶賀、大丈夫?」

「はは……そう言う嘉正も、酷い顔してる」



来光くんを支えるのを壁に持たれさせた嘉正くんは深い息を吐きながら座り込んだ。

進んでいるはずなのに、残穢の匂いが濃くなっている。そのせいで、みんなとても辛そうだ。


そういう私も、少し前から目眩を感じる。



「泰紀くんは、まだ平気なの……?」

「あ、俺? まあな。俺ん家の神社って笑えるくらい貧乏でさ、ろくに神事する金もなかったんだ。だから、社の周りはいっつもすんごい残穢とか瘴気とか溢れかえってたんだよ。慣れだな」


ふふん、と鼻を鳴らした泰紀くんに「威張ることじゃねーよ」と力なく慶賀くんが突っ込んだ。



「それにしても、歩いてるはずなのに進んでる感じがしねえな。残穢の感じも、明らかに濃くなってる」

「もう変な意地を張ってる場合じゃないね。薫先生に連絡しよう。来光、頼める?」

「ん……」



青い顔をした来光くんが懐から袱紗を取り出して、その中に入れていた護符を取り出すとふっと息を吹きかける。

宙をふわりと舞ったそれは、来光くんの手のひらに収まるその瞬間に、ポンッと音を立てて鳥の形に姿を変える。