「落ち込んでる暇はないよ、慶賀。ほら、気を取り直して立ち上がる!」
嘉正くんに励まされて、のろりと立ち上がった。
嬉々先生にあの目で睨まれて淡々と怒られるのも怖いけど、今はまず教室を探すことの方が先だ。
「でもよー、現在地が分からなきゃ動くに動けねえよな」
「そうだね。ここが学校のどの校舎にあるのかだけでも分かればいいん、だけ……ど……」
1番後ろを歩いていた来光くんが歯切れ悪くそう言ったかと思うと、どさりと倒れ込む音が聞こえた。
「来光!」
弾けるように振り返ると、来光くんは廊下に蹲るようにして座り込んでいた。
「ら、来光……! どうしたの? 大丈夫?」
「ご、ごめん……なんか急に気分悪くなって」
そう言う来光くんの顔は見るからに青ざめていて具合が悪そうだった。
来光くんの肩を抱いた嘉正くんがはっと顔を上げた。
「空気が悪い……どこからが残穢が流れてきてるみたいだ」
「残穢が? でもここ、校舎の中だぞ」
怪訝な顔をした泰紀くんがすん、と鼻をすする。