「こんな廊下初めて通ったよ。泰紀たちは見覚えないの? よく学校探検してたでしょ」
「いやー、俺達もこんなとこ初めて来たよな?」
「うん、初めて来た」
声を揃えてそう言う二人に、嘉正くんは「うーん」と首を捻る。
「便りを飛ばして、薫先生に迎えに来てもらう?」
「ヤダ、絶対にヤダ! そんなことしたらあの人一生俺らのことからかって、「あん時助けてやったんだから」とか言っていいようにこき使ってくるに決まってる!」
確かに、にやにや笑った薫先生が「お前ら、高校生のくせに学校で迷子になったのー?」と笑いながら歩いてくる姿が安易に想像できる。
みんな想像したらしく、苦い顔を浮かべた。
「もうちょっと探してみようか」
「そうだね。でも、そろそろ次の授業始まる頃じゃない? 次って確か……」
その瞬間、慶賀くんが分かりやすくさあっと青ざめた。
「うわぁーーっ ッ! 次の授業、嬉々先生だーッ!! やばい、やばいよ今何時!?」
「誰も時計持ってないよ」
「うわぁーーッ! 終わった! 確実に終わった!!!」
頭を抱えて発狂する慶賀くんは廊下に座り込む。