「……────さては、ここかッ!」



慶賀くんがスパン!と開けた扉の先に広がるのは、よく分からない埃の被った道具が沢山ある乱雑な部屋だった。


「くそッ、またハズレ! なあ、おかしくない!? もう一時間近くさ迷ってるだけど俺たち!」


うんざりしたようのそう言って、投げやりに扉を閉めた。

確かにおかしい、教室探しを初めてもう一時間近くは経っている。

普段なら大体10分もあればホームルーム教室へ戻れるとみんなは言っていた。

私や初等部の一年生ならまだしも、初等部中等部とこの学校に通って、この校舎にも慣れ親しんでいる嘉正くん達がここまで迷うのは少し変だ。


「……誰もいないね」


当たりを見回してそう言う。

私たちの教室がある廊下とはガラリと雰囲気が違うその廊下は、窓がないせいか心許ない蛍光灯の灯りだけが足元を照らし薄暗い。

空気も誇りっぽくて、開けた扉は全部空き教室や倉庫になった教室ばかりだ。



階段を昇ったり降りたり、廊下を曲がったり渡り廊下を渡ったり。

一時間近く空間が歪んだ校舎の中を歩き続けたせいで、自分がどこにいるのか全く分からない。