ほら、と来光くんが指さした先には、初等部の一年生と思われる子供たちが教科書を抱きしめながら右往左往している姿があった。
「結界が張り替えられたら、次の授業は休校になるんだよ。みんな迷子になるから」
「わたしも毎月迷子になりそう……」
「大丈夫だよ。学校の中なら最悪迷っても、消灯の時刻までには先生が探しに来てくれるから」
励ましになっていない励ましだ。
「俺らも"教室探し"行こうぜ〜」
「教室探し?」
「開けたドアがホームルーム教室に繋がってるとは限らないからね」
ええ、と目を丸くする。
でも確かにその通りだ、空間が歪むということは、その場にあったものが別の場所に行ってしまうということだ。
「今度の教室は下の方にあるといいな〜。中学の時なんて3年間ずっと、12階分の階段登ったからね!」
ひえ、と息を飲む。
まだまだこの学校には私の知らないことが多いようだ。