登りとは正反対に、降りる時はいつものように十数段で元の階に戻ってきた。
歩いてきた廊下を戻り始める私たち。
「まねきの社の鳥居に付与された結界が貼り直される日だよ」
「それと何か関係があるの?」
「俺も詳しくは知らないんだけど、その結界は特殊らしくて。例えば、学校へ入ってくる時の石階段がその例なんだけど」
初めて神修へ来た日のことを思い出す。
大きな鳥居の先に広がる果てしなく続く石階段を見て、げんなりしたんだっけ。
けれどそれは見せかけの階段、神修の関係者であれば十段ほど登れば学校の敷地内へ入れて、許可されない者がひとたび足を踏み入れれば二度とその階段から出ることは出来ないのだとか。
「空間を歪ませて守りを強める結界なんだよ。学校の石階段や鎮守の森だけでなくて、学校の至る所にも空間を歪ませる結界が施されてるんだ」
じゃあさっき、階段を上まで登りきることが出来なかったのは空間を歪ませる結界のせいだったのか。
でも、本の一時間前まではあの階段はちゃんと昇り降り出来たはずなのに。
「毎月1日と15日に、その結界が貼り直されるんだよ。だから学校の至る所にあった"空間の捻れの位置"がガラッと変わっちゃうんだよね」
「えっ、毎月変わるの?」
「そうだよ。だからその日はよく新入生が迷子になりがち」