以前禄輪さんが「神修派の奴らは……」というようなことを言っていたのは、そういう意味だったんだ。
「じゃあ、神修にいる私は、神修派ということ……?」
「巫寿」
嘉正くんが割って入った。
目を瞬かせて嘉正くんを見上げる。
「日本神社本庁は本来、ひとつのまとまった組織だったんだけど、空亡戦を機にふたつの考え方に割れてしまったんだ。そうなってしまったのには、色んな人の苦労だったり悔しさがあるから」
嘉正くんのその言葉が何を意味するのか分からなくて、じっと瞳を見つめる。
「本庁に居るから本庁派だとか、神修の生徒だから神修派だとか、尊敬してる人がどっちの考え方だからとか、そんなふうに決めちゃだめだと思うんだ」
「皆が神修派だから私も神修派になる、って考え方はダメってこと……?」
そう、と嘉正くんが頷く。
「ここで学んでいく中で色んな考え方に触れて、それで本庁派の考えが会うなら本庁派を尊重したらいいし、神修派に賛成するならそうしたらいい」
「そのふたつはどう違うの? 考え方が違うんだよね」
「細かいことは色々あるけど、大きく違うのは空亡に対する考え方かな。本庁派は"空亡は滅すべき”と考えていて、神修派は”空亡は封印すべき”って考えてるんだよ」
うん? と首を傾げる。
まだこの世界のことをしっかりと理解しているわけじゃないけれど、悪い妖をそのままにしておくのは良くないことは何となくわかっている。
私が魑魅に襲われた時は禄輪さんは祝詞を奏上して魑魅を祓ったし、授業の初日に薫先生に連れられて山へ行った日も、蛇神の残穢を祓った。
悪い妖は祓うのが、普通何だと思っていたけれど……。