嬉々先生に睨まれながらすねこすりを柵に戻した私たちは、とぼとぼと寮へ戻る帰路を歩く。


「だから僕は嫌だったんだ! いっつもいっつもこう! 二ヶ月も文殿の整理なんて罰則が重すぎるよ……。力作の狐面もこんなボロボロにされて、開門祭も行けないなんて」


割れた狐面を胸に抱きながらしょんぼりと肩を落とした来光くん。

流石に悪く思ったのか、慶賀くんと泰紀くんは申し訳なさそうに「ごめん」と私たちに頭を下げた。


「もう慣れたよ。ちゃんと整理を手伝えば、また方賢《ほうけん》権禰宜《ごんねぎ》が罰則を軽くするように計らってくれるかもしれないし」


はあ、とため息をついた嘉正くんに、ふたりはいっそう縮こまる。

というか、「また」ということは、いつもこうなんだ……。


「そういえば慶賀くん、さっき恵生くんに向かって"本庁派"がどうって言ってたよね。あれってどういう意味なの……?」

「え? ああ、うん」


歯切れ悪く頷いた慶賀くん。


「俺たちや薫先生や、もちろん巫寿も。全ての神職は日本神社本庁って機関に属してるんだけど、その中に二つの派閥があってさ。ひとつが"本庁派"、恵生とか、社でお勤めせずに本庁で働く人達の事。もうひとつが"神修派"、社でお勤めする神職や神修で働いてる神職のことなんだ」