「学生寮の門限は遠の昔に過ぎているが、こんなところで何をしている」
嬉々先生の問いかけに、びくりと肩を震わせる。
恵生くんは臆せず答えた。
「俺は両親の手伝いで外に出ているだけです」
「そうか。宜嘉正松山来光志々尾慶賀近衛泰紀椎名巫寿、お前たちは」
みんな気まずい顔でお互いの顔を見て黙り込む。
「門限破りの罰で二ヶ月間放課後の文殿整理を言い渡す。全員だ」
「そんな! 一ヶ月後には開門祭《かいもんさい》があるのに!」
慶賀くんが悲鳴に近い声でそう叫ぶ。
恵生くんは我関せずと踵を返した。その背中に嬉々先生が呼びかける。
「お前もだぞ京極恵生」
「……は?」
「門限時間外に外にいた。"理由はそれだけで十分だ"。そうなんだろう」
「なッ────」
顔を赤くした恵生くんがなにか言おうと口を開いたが、はっと我に返ったように口を閉ざす。
感情を押し殺すように目を瞑って深く息を吐いた恵生くんは、私たちをきつく睨むと早足で去っていった。