「────よく聞きなさい」
両肩を掴んで私の顔を覗き込む。
真剣な声でそう言われ、戸惑い気味に頷いた。
「もし巫寿が本当に、自分の身に何が起きたのか知りたいと思うのなら、神役修詞高等学校へ行くべきだ。巫寿の兄さんや父さん母さんが学んだ場所だ」
「しん、えき?」
「巫寿の両親は、妖から巫寿を隠そうとした。祝寿もその想いを受け継いで今まで巫寿を守ってきた。俺のこの提案は、巫寿を大切に守ってきた人達の意思に反してしまうかもしれない」
ばくばくと、心臓が騒ぎだす。
「両親のこと、自分のこと、これからのこと、身の守り方……巫寿が知らない、一恍や泉寿や祝寿の過ごした歳月をそこで知ることが出来るはずだ」
花吹雪が舞散った。
まるでなにかに答えるように、まるで何かを祝福するように、まるで何かを手招くかのように。
「行きたい、です」
本当は怖くてたまらなかった。
今なら「普通」の生活に戻ることだってできる。日常に戻ることを心の中では望んでいたはずなのに。
まるでもう一人の自分が、そうさせているようだった。
「行って、知りたいです」
お父さんとお母さんが、何と戦っていたのか。
お兄ちゃんは何から私を守ろうとしてくれていたのか。
受け継いだ私の中に宿る力はなんなのか。
そして私の運命は、どこへ続いているのか。