その悲鳴が感染するようにあちこちで広がっていき、徐々にこちらへ近づいて来ている。
「な、なに!?」
「すごい悲鳴……向こうで何かあったらしい。騒ぎがこっちに移動してるね」
寮へ戻ろう、と嘉正くんが振り返ったその時、「うわっ!」と来光くんが声を上げた。
私たちが振り返った瞬間、来光くんは地面に尻もちを着いて目を瞬かせている。
「ら、来光くん……!」
「大丈夫か来光!」
慌てて手を差し出して、二人がかりで立ち上がらせる。
周りには来光くんと同じように悲鳴をあげて尻もちをつく人達が沢山いる。
何事かと当たりを見渡す。
ふと、視界の隅にすば知っこい何かが横切った。ものすごい速さで大勢の足元を移動するそいつ。
「あ、不味まずい! 巫寿、座って!」
へ? と首を傾げたその時、自分の足元にふわふわの何かが触れた。
それと同時に、驚くほど強い力ですねの当たりをぐんと押される。
踏ん張ることも間に合わず、ふらりと後ろに傾いた。