少し歩いたところで、嘉正くんは歩みを止めた。気が付かずに背中にぶつかって「わっ」と顔を上げた表紙に誰かと目が合った。

ぺっとりと真っ白に塗られた顔に、丸い眉。けれど目鼻立ちはハッキリとしていて、髪の毛も艶々、少しふっくらしたほっぺたが美人なのに可愛らしい。


ちょっとボロボロだけれど、昔の女官みたいな綺麗な着物を着ている。

すごく美人な人だな、と彼女をじっと見る。


「なんだなんだ嘉正に来光じゃないか! まーた抜け出してきたなガキンチョども!」


ちょっとだけ面をずらして顔を見せた二人に気付くと、親しげに話しかけてくるその女性。


「いい月夜だね、青女房」

「こんばんは。お久しぶりです」

「そうか、学校は春休みが終わって新学期だったな!」


カラカラと笑うその人は、私と目を合わせると興味深げに目を輝かせる。


「その子は? 新入生?」

「高等部へ編入してきた新しいクラスメイトだよ。────巫寿、大丈夫?」

「……? うん、大丈夫だよ。初めまして、巫寿です」


なぜ「大丈夫?」と聞いたのかよく分からずに首を傾げる。


その人はにかっと歯を見せて笑う。

思わず「あっ」と声を上げてしまった。その人の歯は真っ黒塗られていたからだ。



「巫寿だな! アタシは青女房って妖だよ。よろしくな」

「妖……? お姉さんは妖なんですか?」

「あははっ、当たり前だろ! 今夜の社は人間よりも妖の方が多いぞ!」




少し歩いたところで、嘉正くんは歩みを止めた。気が付かずに背中にぶつかって「わっ」と顔を上げた表紙に誰かと目が合った。

ぺっとりと真っ白に塗られた顔に、丸い眉。けれど目鼻立ちはハッキリとしていて、髪の毛も艶々、少しふっくらしたほっぺたが美人なのに可愛らしい。


ちょっとボロボロだけれど、昔の女官みたいな綺麗な着物を着ている。

すごく美人な人だな、と彼女をじっと見る。


「なんだなんだ嘉正に来光じゃないか! まーた抜け出してきたなガキンチョども!」


ちょっとだけ面をずらして顔を見せた二人に気付くと、親しげに話しかけてくるその女性。


「いい月夜だね、青女房」

「こんばんは。お久しぶりです」

「そうか、学校は春休みが終わって新学期だったな!」


カラカラと笑うその人は、私と目を合わせると興味深げに目を輝かせる。


「その子は? 新入生?」

「高等部へ編入してきた新しいクラスメイトだよ。────巫寿、大丈夫?」

「……? うん、大丈夫だよ。初めまして、巫寿です」


なぜ「大丈夫?」と聞いたのかよく分からずに首を傾げる。


その人はにかっと歯を見せて笑う。

思わず「あっ」と声を上げてしまった。その人の歯は真っ黒塗られていたからだ。



「巫寿だな! アタシは青女房って妖だよ。よろしくな」

「妖……? お姉さんは妖なんですか?」

「あははっ、当たり前だろ! 今夜の社は人間よりも妖の方が多いぞ!」