寮から社頭へ続く階段を降りると、一気に目の前が華やかになった。

夜空を彩る数々の赤い提灯に龍笛やわだいこの音色。沢山の人が話す声は、昔お兄ちゃんと行った花火大会に似ている。


まだ本殿とは離れているからか妖の姿はなかった。

どの妖たちも参道に出店を出すからそっちに集まるらしい。


「怖かったら下向いてていいからね。ぶつからないように引っ張るし」

「……ありがとう。まだ、大丈夫」


うん、と笑った嘉正くんは頭に着けていた自分の面を下げて顔につける。

慌てて私もそれを真似て狐面を付けた。


参道をめざして歩いていると、ざわざわする声が次第に大きくなっていく。

嘉正くんの裾を握りしめてつま先を見ながら歩いていると、自分の隣を通り過ぎていく足が増えていく。

明らかに人ではない三本指や一本足に、ゴクリと唾を飲む。


「慶賀たち、どこいるんだろうね」

「買い食いして回ってるんじゃないかな。昼にりんご飴の話してたよ」

「じゃあ青女房のとこかな」


そんな話をしながら社頭を進むふたり。