「仕方ないよ。巫寿はまだこの世界に来て間もないんだから。怖い思いも沢山して、苦手になってしまうのも無理もない」
オレンジ色の明かりを目指して、私たちは歩き始めた。
「僕もグロい妖とかはまだ、「うわっ」て思っちゃうな。急に出てきたら、多分しっぽ巻いて逃げちゃうね」
「あはは、確かに。俺も髪の毛が長い妖はギョってなる」
「……ふたりでも、苦手な妖がいるの?」
当たり前じゃん、とふたりはケラケラ笑う。
「自分と違う姿の生き物に恐怖を抱くのは当たり前のことだよ。それが悪だなんて誰も思わない」
嘉正くんの言葉に付け加えるようにして「一部を除いて」と来光くんが苦い顔をする。
「僕、恵生くん苦手だな。いつもツンケンしてるし協調性ないし。中等部からずっとあんな感じなんだよ」
「こら来光。呪が強い言葉は口にしちゃいけないよ」
「そう、だけどさ」
「恵生も来光も、言いたいことは分かるよ」
「僕には分からないね」
ふん、と鼻を鳴らした来光くん。
嘉正くんは私と目を合わすと困ったように肩を竦めた。