玉じいは赤い座布団を押し入れから取り出して引いてくれた。いつも遊びに来た時に出してくれる座布団だ。
座って俯いていると湯のみに熱い緑茶を淹れてくれた。
両手で包み込むと冷えきった指先へとじんわり熱がうつる。
「祝寿は」
その問いかけに小さく首を振る。
「……いつ目が覚めるか分からないって、お医者さんは」
「そう、か。わしが、もう少し早く見つけていれば」
「それは違うよ! 玉じいが見つけてくれなかったら、お兄ちゃんは今頃」
その続きは言葉に出すのもおぞましくて口を閉ざした。
「……お兄ちゃんは何があったの? お医者さんが変なこと言ってた。普通の怪我じゃないって」
「見つけた時にはもう倒れていた。何があったかは、わしにも分からん」
普通の怪我じゃないってどういうことなんだろう。
あの時は気が動転していて、ちゃんと話を詳しく聞くことが出来なかった。
普通の怪我って、転んだり事故にあった時の怪我ってことだよね。
じゃあ、お兄ちゃんは事故でも怪我でもなくて、誰かに傷つけられたということなんだろうか。
誰かが、お兄ちゃんをあんなになるまで傷付けたということなんだろうか。
なぜ、どうして?