来光くん手製の狐面を頭に被り誰かが着古した着物を肩に羽織って、私たちは寮をこっそりと抜け出した。

社頭をめざしながら歩いていると、遠くから風に乗って和太鼓や笛の音色が聞こえてきた。


社頭の方からだ。

ぼんやりとオレンジ色の灯りが点々と灯っている。



「おっ、始まってる!」


面を軽く持ち上げてそう言った慶賀くんが駆け出す。


「あ!ずるいぞ慶賀!」


泰紀くんもその背中を追いかけ走り出した。


「何があるの?」

「土曜日と日曜日の夜は、妖たちがまねきの社の社頭に出店を出すんだよ。でも僕はあんまり好きじゃないな。ゲテモノが多いし……」

「そう? 俺は結構すきだけどな。夜の社が、現世の妖たちにとっては唯一の交流の場だからね、毎日出店を出すことを許可している社も少ないけれどあるみたい。ほら、この前「皇神《すべらがみ》の歴史」の授業で習った結眞津々実尊《ゆまつづみのみこと》が御祭神のゆいもりの社とか」

「妖が、沢山いるの?」


言葉に出して尋ねた瞬間、寒気がしたような気がして体がぶるりと震える。

思わず両腕を抱きしめた。


「巫寿、まだ本物の妖を見たことがないもんね。普通は神社実習がある三月にしか会わないし。やっぱり怖い?」


そうじゃないの、と小さく首を振る。