「これって」

「身に着ければ景色に溶け込むように祝詞を書いてあるよ。本当は、授力をこんな使い方したくないけどね……」


はあ、とため息をこぼす来光くん。

授力────過去を見る去見《きょけん》の明、千里もの先を見る遠見《えんけん》の明、書いた文字に力を宿す書宿《しょしゅく》の明。稀に神職のなかには、このような言霊の力以外に二つ目の力を持つ者がいると禄輪さんから聞いた。

そして空亡はこの授力をもつ神職を狙って、その力を奪おうとした。


「来光くんは授力を持ってるの……?」

「うん。書宿の明をね。そんなに強いものじゃないけど」


私も、と言いかけて禄輪さんの言葉をはっと思い出す。

『決して口外してはいけない』

確かにそう言っていた。


不思議そうに首を傾げたみんなに、なんでもないよと首を振る。



「とりあえず、これを被ってその着物を肩に羽織っとけば、ぜーったいに誰にもバレずに遊べるから!」


自慢げにそういった慶賀くんに、「僕が作ったお面なんだけど!」と来光くんは頬を膨らませた。