たしか、どの神社も人間が通るための「表の鳥居」と、妖が通るための「裏の鳥居」のふたつの鳥居がある。

日があるうちは表の鳥居から人が、月が登ると裏の鳥居から妖が入れて、違う種族がお互いの鳥居を通ることはできないのだとか。

この世界の社は、普通の神社のように鳥居がなくても塀を乗り越えれば境内に入れるような仕組みではなく、社の中へ入るには鳥居を通るしか方法がない。



「社を閉ざす」と言うことは、裏の鳥居も表の鳥居も封鎖してしまったということだ。

つまり、社への入口を塞いでしまうということ。

そうすると、中にいたものはもう絶対に幽世にも現世にも出ることは出来ない。


「塞いでしまえば、中の人はどうなるの?」

「分からない。今までにそんなことをした神職は誰一人としていなかったから。残されたのは鎮守の森だけで、どれだけの人で探しても、表の鳥居も裏の鳥居も見つからなかった」



「その時の神職は社の中にいて、空亡を見た瞬間社を閉ざしたんだって。本庁に霊符を送ったから、そこに現れたのが空亡であること、空亡は人の姿に身をやつしていること、そして空亡を封じるために社を閉じることがこちらに伝わったんだ」


嘉正くんは悲痛な面持ちでそう言った。