タオルで顔を拭きながら共用スペースを歩いていると、「巫寿ーッ!」と大きな声で名前を呼ばれた。

振り返ると、遠くからの凄い勢いで慶賀くんと泰紀くん、二人に引きずられるようにして来光くんが走ってくるのが見えた。


何事かと目を瞬かせる。


「お、おはよう……。どうしたの……? 皆してそんなに慌てて」

「落ち着いてなんか居られるもんかよ! 禄輪禰宜が、俺たちに稽古付けてくれるって!」


うわぁーっと狂喜乱舞しながら走っていった慶賀くん。


「巫寿と早く来いよ! こんな機会逃したら、一生後悔するぞ!」


興奮気味に来光くんにヘッドロックをかける泰紀くんは、そう言い残してまた走り出す。



「僕まだ朝飯食べてる途中なのにーッ」


来光くんの悲痛な叫び声が廊下に響いた。