「巫寿、この学校へ来たことを後悔してるか?」

「え、」


唐突にそう聞かれて、困惑気味に聞き返す。


「巫寿が、上手く力を扱えないのは、まだ受け入れられていないからのように思える」

「で、でも。私が選んでここに来たから」

「そうかもしれないな。でも、また騰蛇《とうだ》を使役していないのは、心のどこかでこの世界やその力のことを受け入れられていないから、ではないか?」


返す言葉がなかった。


お父さんやお母さん、お兄ちゃんがどんな日々を送っていたのか。私の中にある不思議な力は何なのか。

それを知りたくて、自分で神修へ行こうと決めた。


けれどまだ心のどこかで、お兄ちゃんと平和に暮らしていたあの普通の生活を望む自分がいるのも確かだった。

普通に朝起きて普通に学校へ行って。勉強もそこそこできて、テストも割といい点が取れて。

帰ってきたらお兄ちゃんが「おかえり」って晩御飯を用意してくれてて。


ほんの数週間前まではそんな生活だったのに、何もかもガラリと変わってしまった。



妖に襲われた時のあの恐怖はいつまでも忘れられなくて、禄輪さんのようにいとも簡単にあんな強い妖を祓えるようになるとは思えない。