お兄ちゃんに似た大きな手に背を撫でられて、涙がこぼれた。

ぽろぽろ零れるそれは、ノートの表紙を濡らしていく。

禄輪さんは私の涙が止まるまで、黙って肩を優しく叩いてくれた。

差し出された手ぬぐいで涙を脱ぐって顔を上げる。



「顔立ちや雰囲気は間違いなく泉寿にそっくりだが、勤勉さは間違いなく一恍《いっこう》譲りだな」

「お父さん……?」

「ああ、一恍は努力を惜しまない勤勉な男だった。反対に泉寿は、手に負えないほどのお転婆娘だった」


お母さんがお転婆娘?

今日の授業で見た神楽舞を踊るお母さんの姿からは想像もできない。



「それはそうと、『言霊の力を使うと倒れる』と言ったな。どういうことだ?」

「あの、薫先生が言うには、私は祝詞を奏上する時にアクセル全開の状態で言霊の力を使っているらしいんです」

「なるほど、力の調整か。調整する時のイメージは人それぞれだから、掴むまでは長いだろう」


やっぱりそうなんだ。

はあ、とため息をこぼす。