「神修派《しんしゅうは》の神職はそう言い広めている奴が多いらしいが、私がその任を与えられたのはあの場で私が一番適任だったから。まねきの禰宜に選んで頂いたのは、御祭神さまのご意思だ」
「でも」
「他の人の言葉を鵜呑みにしてはいけない。当の本人である私がそう言うんだ」
禄輪さんは、やんわりとそれ以上は言うなと態度で制す。
目を伏せて口をつぐめば、「ありがとう」とまた頭を撫でられた。
「で、どうだ学校生活は。友達はできたか?」
私の席の隣に座った禄輪さんは、頬杖をついて尋ねる。
「困ってることは無いか?」
禄輪さんは、ちらりと私が机の上に広げていたノートに視線を落とした。
咄嗟にそれを閉じて自分の方へ引き寄せる。
「高等部からは専門性の高い授業が多いからな。これまで勉強してきたことが役に立たなくて、着いていくのも難しいだろう」
自分から言わなくても、禄輪さんにはお見通しだったらしい。
喉がぎゅっと閉まって、鼻の奥がつんとする。
「授業、ついていけなくて」
「ああ」
「皆にも、迷惑かけちゃって」
「そうだったのか」
「言霊の力も、使う度に倒れちゃうし」
知らない場所、知らないこと。
右も左も分からない世界で、ずっと気を張っていたのかもしれない。