「禄輪さん、どうして学校に……?」
「最近まで長期の任務で出掛けていたんだが、本来は神修の教員なんだ。今薫が教えてる授業は本来、私の受け持ちなんだよ」
薫先生の受け持ち、となるとも「詞表現演習」だ。
禄輪さんって、神修の先生だったんだ……!
「まだ教員に本復職するのは難しいだろうけど、任務が一区切り着いたからその報告に来たんだ。これからは臨時講師として、神修に顔を出すことになる」
「報告……」
先程聞いたばかりの単語に思わず反応する。
ホームルームの時、薫先生は鬼門の結界について報告をするためにまねきの社の禰宜が来ていると言った。
じゃあ、もしかして……。
「禄輪さんは、まねきの社の禰宜……?」
「ああ」
あ、と声を漏らす。
奉仕報告祭の日の夜に、嘉正くんたちと話したことを思い出したからだ。
まねきの社の禰宜は、本来、別の社の神主だった。
空亡戦で禰宜の生家の社が潰れてしまったけれど、社の再興をする間もなく、空亡戦で破られた鬼門の修復をするために長い間鬼脈に遣わされていたんだ、と。
その代わりに、まねきの社の禰宜という役職を賜ったのだと。
「ん? もしかして聞いたのか? 私が禰宜になった経緯について」
困ったように眉を下げて笑った禄輪さん。
俯くようにひとつ頷く。