「おっと! ちょっと待てい三馬鹿」
薫先生は形代《かたしろ》と呼ばれる人型の紙を取り出すと、3人に向かって勢いよくそれを放つ。
空中でムクムクと大きくなったその紙は、来光くん、泰紀くん、慶賀くんを後ろから羽交い締めにして捕まえた。
自分の息を吹きかけると、自由自在に操ることが出来る術だ。
「うわあっ」
「ぎゃっ」
「いででっ」
三人の悲鳴が響く。慶賀くんは少し膨れっ面で「何!?」と薫先生を睨む。
「離してよ薫先生! 俺も禰宜のとこ行きたいー!!」
「行くのはいいけど、まねきの巫女から放課後に罰則を受けるようにって言付け預かってるよ」
「げっ! 俺のあれか!」
泰紀くんがそう言って、昼休みに社の屋根へサッカーボールを乗せてしまったことを思い出す。
「あはは、心当たりあるんだね。それなら仕方ない」
「僕関係ないんですけど……!」
来光くんがズレたメガネのブリッジを押し上げながらそう抗議する。
「まあまあ、禰宜が帰っちゃわないうちにさっさと終わらしなよ」
「なんでいっつもこうなんだよーッ」
形代がひらりと元の大きさに戻る。
くそー!と叫びながら三人が教室を飛び出して行った。