「あれ? ここ、もしかして学校……?」

「そうよ、ここは神楽殿ね。学期末にある奉納祭の記録テープなの」

「奉納祭?」

「その学期で習ったことを、まねきの社の御祭神さまにお見せするのよ。まねきの御祭神さまは学問の神様ですから、学生が学問の進達を報告するとお喜びになるの。一学期は祝詞奏上で残穢を祓ったり形代を競わせたり、二学期は雅楽や神楽舞を披露するの」


へえ、と相槌をうつ。

体育祭や文化祭と同じようなものだろう、と推測する。


テレビを覗き込めば、神楽殿の舞台で巫女装束に桃の頭飾りを付けた女の子が、軽やかな足取りで舞台の上を舞っている。

手に持つ神楽鈴は、その子が動く度にしゃらりと響く。

雲間から零れる太陽の光の清らかな音色だった。


「綺麗な人……天女様が降りてきたみたい」

「あら、巫寿さんもよく知っている人よ」

「え?」


目を丸くした私に、富宇先生はくすくすと笑った。

それ以上は何も言わないので、自分で答えを見つけろということらしい。


膝立ちでテレビに近付いて、食い入るようにテレビを見つめる。


じーっと見つめて、カメラがその女の子の顔に寄った瞬間、思わず「あっ!」と声を上げた。


「富宇先生! もしかして、この女の子ってお母さん……?」

「ふふ、その通り! 巫寿さんと同い年の泉寿さんよ。これは高校一年生の二学期の奉納祭ね。1年生なのに、高等部の代表として神楽殿に立ったのよ〜」