「さ、お喋りはこの辺にして。片付け、いつも手伝ってくれてありがとうね。授業を始めましょうか」
姿勢を質した富宇先生に習って、私も背筋を伸ばす。そして、畳に手を着いて「お願いします」と頭を下げた。
「はい、よろしくお願いします」
そう言って微笑むと、先生はよいしょ、と立ち上がる。
いつもは座ったまま授業が始まる前から、急に立ち上がった富宇先生に首を傾げる。
「先生ね、ほら、もうこんなおばあちゃんでしょう。だからちゃんとしたお手本を巫寿さんに見せられないのが申し訳ないと思っていて、それで色々考えて、今日は別の人のお手本を見せようと思って」
そう言うと、教室のはしに置いてあったブラウン管テレビを台ごとからからと引っ張ってきた。
そして、あらかじめ用意していたらしいビデオテープ片手に「どうするんだったかしら?」と首を傾げる。
「先生、ここだよ」
玉じいの家がブラウン管テレビだったので、使い方は知っている。
ビデオテープを差し込んでリモコンを操作すると、砂嵐の後、画面に見慣れた景色が映った。