いつも通り体操着に着替えた私は早めに神楽の教室へ向かう。
「お願いします」
声をかけながらカラカラと引き戸を開けると、前の授業の片付けをしていたらしい富宇先生が振り返った。
「こんにちは、巫寿さん」
履物を脱いで揃えると、畳張りの教室に上がる。
歩み寄って手元を覗き込めば、富宇先生は神楽鈴を一つ一つ手ぬぐいで磨き上げていた。
いつも片付けを手伝っているので要領はわかる。
富宇先生の前に座ってそれを手伝いながら、いつものように学校であったことを話す。
「────それで、慶賀くんが変な事言うから、嘉正くんが教科書でパコン!て何度も叩いたんです。言葉を慎めって」
くすくす笑いながら先程の光景を思い出す。
「まあまあ。高校生になっても相変わらずヤンチャな事をしているのね」
「お昼休みも、皆でサッカーをしてたら泰紀くんが思いっ切り蹴飛ばしたボールが社殿の屋根に乗ってしまって。そしたら、カンカンに怒った巫女さまが出てきて。皆で慌てて逃げたんですけど、どうやって屋根にサッカーボールが乗ったってわかったんですかね?」
「今の代のまねきの巫女さまは優秀ですからねえ」
その時、始業の鐘が響き、富宇先生は気を取り直すようにパンと手を叩いた。