今日最後の六限目は、神楽《かぐら》の授業だ。
男女に別れて行う授業で、男子は和楽器、女子は巫女舞を習う。
1年生は私しかいないので、先生とマンツーマンの授業だ。
私が唯一、まだなんとか追いつけている授業で、なおかつ誰にも迷惑をかけることもないだけあって、神楽の授業はどの科目よりも断然楽しかった。
神楽舞を教えてくれる蘭《あららぎ》富宇《ふう》先生は、今年63になるおばあちゃん先生。
元はまねきの社の巫女で、退職されてからはずっと神修で神楽の科目を担当しているらしい。
のんびりおっとりした口調と性格だけれど割とはっきりものを言う人で、優しい顔をしながら「巫寿さんは不器用ねぇ」と言われた日にはちょっとだけ傷付いた。
けれど初心者の私にとことん付き合ってくれるし、説明は分かりやすい。
授業以外にも、社での立ち振る舞いや礼儀作法なんかも教えてくれて、授業終わりにはいつも巾着いっぱいに入ったお菓子の中からご褒美にひとつ選ばせてくれる。
授業が始まる前と終わったあとに、富宇先生に学校生活での困り事やちょっとした愚痴を聞いてもらう時間はいつも心が休まった。
祖父母とは会ったことがないけれど、おばあちゃんがいたらこんな感じなのかな、なんてふと思う。