「────ほんとにごめんね」


詞表現実習の授業が終わって、教室へ戻りながら項垂れるようにそう言った。


「気にすんなって! ぶっちゃけ巫寿が祓ってくれるから、薫先生も中等部の時みたいに『祓い終わるまで帰しません』とか言わないし。楽できていいもんよ〜」


伸びをしながら泰紀くんはそう言う。

授業中に私が奏上した祝詞が暴走して全部祓ってしまうのは、初日の授業を除き今日で4度目だ。


毎回暴走してはぷつっと意識を飛ばしてしまい、授業が終わる頃に薫先生に起こされることの繰り返し。


いつになったら私はみんなと同じ場所に追いつけるのだろう。


「仕方ねぇよ巫寿! なんにも知らなかったとこからスタートしてんだし、迷惑なんて思ってねーから!」

「おっ、慶賀いい事言うねぇ!」

「がははっ、だろ!」


煽てられた慶賀くんは、嬉しそうに泰紀くんの背中に体当たりしてはしゃぐ。


「慶賀くんは、言霊の力の強弱をどうやって調整してるの……?」

「おれ? うーん、あんまり意識したことないけど……強いて言うなら、うんこ気張る時の感じに似てるかも!」


思わず顔をひきつらせると、パコンッと間髪入れずに嘉正くんが教科書で慶賀くんの頭を叩いた。



「なんだよ! 聞いたのは巫寿だろ!」

「言葉を選べ馬鹿たれ」


嘉正くんは呆れたように息を吐いた。