「巫寿? おーい、起きて。授業終わったよー」
肩を叩かれる感覚に、意識の深いそこから引き戻される。重い瞼をゆっくりひらけば、みんなが私の周りを囲んでいた。
ゴーン、と授業の終わりを知らせる鐘が遠くで響いている。
「あれ、私」
「授業中に倒れたんだよ、気分はどう?」
嘉正くんにそう言われてこめかみを抑えながら思い出す。
そうだ、今は詞表現実習の授業中だった。薫先生に「特別授業」って言われて。みんなと離れたこの松の木の下で略拝詞を唱えようとして、口ずさんだときに倒れてしまったんだ。
「あはは、やっぱりここにして正解だね。倒れても後ろは芝だから、いくらでも倒れられる」
薫先生が私の目の下を軽く引っ張る。
「うん。元気そうだね。にしても巫寿、今回もかなり派手に祓ったね」
「え……?」
「石の呪いはもちろん綺麗さっぱりはらえてるけど、怪火まで、全部祓ちゃったんだよ」
怪火は私以外のみんなが「火鎮祝詞」を練習するために用意されたものだ。
どうやらそれまで私が略拝詞を奏上した際に祓ってしまったらしい。
「やっぱり巫寿は真っ先に出力調整を覚えるべきだね。毎回祓った後にぶっ倒れるようじゃ、一人では何もできない」
何もできない、その言葉に俯いた。
その通りだけれど胸に刺さる。
「今回与えた課題の石もアクセル全開で祓っちゃったけど、本来なら5パーセントくらいの力でも払えるんだよ。時速5キロくらいね。次の授業では、力の強弱を意識しながらやってみようか」
そう言われて、自分の掌を見つめる。
力を抑えるって、どうすればいいんだろう。