「ここはね、ちょっと不思議な力がある子供たちを、神主と巫女に育てるちょっと不思議な学校だよ。あはは、面白いよねぇ。だから大丈夫だよ、巫寿。俺が担任である以上、巫寿の限界を最大限以上に引き上げてやるからね」
そうウィンクした薫は、よっこらしょと立ち上がった。
いつの間にか車は止まっており、森の中の静寂さとは打って変わって人々の喧騒が聞こえる。
あ! と慶賀くんが目を輝かせた。
「スタバ着いた!? 俺、今回の新作楽しみにしてたんだよねー!」
嬉々と車を飛び出た慶賀くんは続けざまに「はあー!?」と声を上げて車に戻ってきた。
「ちょっと薫先生!? 学校に戻ってきてるんだけど!?」
「そうだよ? 授業中なんだから当たり前でしょ」
「約束のスタバは!?」
はて? とでも言うかのように薫先生は首輪傾げる。
「言ったじゃんっ! 10分以内に終わらせたら帰りに寄ってあげるって!」
「俺こうも言ったよね、皆で協力するようにって。今回は残穢を払ったのは巫寿ひとりだし、蛇神の鎮魂も恵生《えい》ひとりでやったんでしょ。残念ながら条件クリアならず。あははっ」
はあ〜〜!? と眉を釣りあげた慶賀くんはケラケラと笑う薫先生に為す術なく地団駄を踏む。
「くそっ! いつもこうだ薫先生は! また俺らに仕事押し付けてタダ働きさせて!」
「おいおい、いつも言ってるでしょ。実践を踏まえた演習、授業の一貫だって。センセイのお陰でどの世代よりも沢山経験できてるんだから、君らは薫センセイに感謝しなくちゃいけないんだぞ〜?」