「────あっ。薫先生、巫寿が起きた!」


小刻みに体が揺れる感覚に、次第に意識がはっきりしていく。

うっすら目を開けると、慶賀くんが至近距離で私の顔を覗き込んでいるのに気が付いた。



「おはよー! 大丈夫? 巫寿」

「……慶賀、くん? どうして」



そこでゆっくりと体を起こすと、肩にかけられていた誰かのブレザーがパサりと落ちた。

そのブレザーを抱き寄せながら、ゆっくりと辺りを見回す。


乗ってきた車の中だった。

薫先生に嘉正くんたちもみんな乗っている。



「巫寿、あんまり無理しない方がいいよ。倒れたばっかりなんだからまだ横になっていたほうがいい」


嘉正くんにそう声をかけられて、自分が森の中でまた倒れたことを思い出した。

そして嘉正くんがカッターシャツ姿であることに気がつく。


「あ、嘉正くん……ブレザー、ありがとう」

「気にしないで。着くまで膝に掛けとくといいよ」



そう言って微笑んだ嘉正くんに、少しだけ頬が熱くなる。



「巫寿、これ食べな」



薫先生にそう呼ばれて振り返ると、振り向きざまに口の中にポイッと何かを入れられる。

驚いてかたまっていると、すぐに口の中でじんわり溶けて甘い味がした。


「……金平糖?」