「蛇神ていうのはその名前の通り、蛇の神様だ。昔、この辺りの住民は蛇を土地神として信仰していたみたい」

「そ、それは……」

「残穢《ざんえ》だね。残穢は分かる?」

「妖が残していく悪いものだって」

「そうそう、大正解。今回の残穢は蛇神の祟り、蛇神から溢れる祟りが体を成して、ここに来る人達に噛み付いて呪っていたわけだ」


先生の手のひらの中でうねうねと暴れる蛇の形をした残穢。

この蛇が噛み付くだけで手足が腐っていくと思うと、背筋を冷たい汗が流れる。


「よし、じゃあこれを祓ってみよう」

「祓う……? 私がですか?」

「巫寿以外に誰がいるのさ」

「で、できません! 私、祝詞とか分からないし、それに、そんな力」

「ダメダメ、"呪の力"が強いよ。発する言葉は"言祝ぎ"を強くしなさい」


そう言われてハッとする。

そういえば、前にも禄輪さんに同じことを言われた。



「まあでも、やりたくないならやらなければいい。うちはそういう校風だからねぇ」


そう言われて言葉につまる。

胸の前でぎゅっと手を握った。