ということは、薫先生は明階の一級だから上から二番目の階位と身分ということになる。

いつも気が抜けた笑い方をして、朝拝もよくサボるみたいだし、何を考えているのか分からない人だと思っていたけれど、もしかするととんでもなくすごい人なのかもしれない。


「巫寿たちの先生はすごいんだぞ〜」

「はは、そうですね……」


自分で「すごい」と言うあたりはどうかと思うけれど、確かに優秀な神職であるのは間違いないのだと思う。



「最後の質問ね。これから対峙する邪神について」


そういった薫先生はおもむろに立ち止まると、バサッと豪快に生い茂る草の中に手を突っ込んだ。


え? と疑問を抱くまもなく、先生は何かを引きずり出そうと腕を引っ張る。



「くそっ、往生際が悪いな、残穢のくせに────っと!」



バサッ!と草木が揺れて先生が何かを引っ張りあげた。



「きゃあっ」



"それ"を目の前に突き出され悲鳴をあげて尻もちをついた。


それはどす黒い皮膚を持つ蛇だった。体の周りに黒いもやを纏い鋭い牙をむき出す。

蛇の頭を掴む薫先生の腕に絡みつき、ものすごい力で締め付けようとしていた。