ゆっくり離れて、その大きな白いもふもふの正体を見上げる。

その巨体と目が会った瞬間、思わず「ひっ」と息を飲んだ。


それは真っ白な毛並みをもつ大きな狐だった。

黄金色の瞳につり上がった目。犬よりもシャープな鼻先、大きな耳に太い尻尾。


「巫寿、大丈夫?」


尻もちを着いた私に手を差し出したのは嘉正くんだった。


「か、嘉正くん……っ! ば、ば、化け狐っ」

「大丈夫大丈夫。落ち着いて。化け狐じゃないよ、薫先生の使役してる霊狐だから、俺たちに危害を加えたりしないよ」


よいしょ、と私を引っ張って立たせる。

黄金色の瞳にじっと見下ろされ、胸がどきどきとうるさい。


「くそーっ!! おろしやがれこのバカ狐!!」


この声は、慶賀くん?

狐さんの影から様子を伺うと、もう一匹の大きな狐が制服の首根っこを加えて慶賀くんをぶらぶらと揺らしていた。



「け、慶賀くん!?」

「助けて巫寿! 離せよクソ霊狐ーっ!!」


うぎゃー!と暴れる慶賀くんを見下ろした狐はフンと鼻を鳴らす。

すると首を軽く振って慶賀くんを投げ飛ばした。


きゃあ! と言う私の叫びと、慶賀くんの悲鳴が重なる。

どさり、と土の上に転がった慶賀くんは蛙が潰れるような声を上げた。