圧迫してくるような空気感が解けて、無意識に止めていた息を吐き出す。
「く、薫先生……? 今のって」
「狐さん達に少し可愛いお願い事しただけだよ。さ、巫寿も出かけるよん」
ほらほら、と両肩をガッチリホールドされて歩くように促される。
狐? お願い事?
一層こんがらがって首を傾げる。
「恵生《えい》も、そんな後ろ歩いてないでこっち来なって」
振り返ると、みんな逃げていったと思っていたが、恵生くんだけがそこに残っていた。
恵生くんはヘラヘラと笑いながら手招きする薫先生に険しい顔を向ける。
「薫さん、依頼された仕事を他人に任せるのは職務放棄だと思います」
「こら恵生。ここでは薫センセイだろ? それに職務放棄じゃなくて、お前たちに経験を積ませるためのジュ、ギョ、ウ」
苦虫を噛み潰したような顔をした恵生くんは渋々歩き出した。