「ぴかぴかの高校一年生の諸君、こっちだよ」


朝拝が済んで、本殿から出たところで(くゆる)先生が私たちのことを迎えに来た。

白衣の前合わせを着崩して、紫袴の裾を袴紐に引っ掛けた姿。

初日のちゃんとした格好とは大違いだ。




「薫センセ〜! ずるい、またサボってたじゃん!」


慶賀くんがぶうと唇を突き出して文句を言った。

確かに思い出してみれば、他のクラスの先生たちは生徒と一緒に出席していたのに、薫先生の姿はなかった。


「あはは、俺はセンセイだから面倒……朝拝には出なくても罰則がないんだよ。いいだろういいだろう。これが大人になるということだよ少年」


今、面倒なって言いかけてなかった……?



「罰則がないから出なくていいってわけじゃないと思うんですけど……」

「固いな来光は。バレなきゃいいんだよ、バレなきゃ。人生上手いこと手ぇ抜いて楽しんだもん勝ち。楽しいって字は(らく)とも読むんだぞ」


へらりと笑った先生は、来光くんの頭をぐりぐりと撫でる。


「それにしても薫先生どうしたんですか。俺たち今から教室に戻るところですよ」



確かに、これから朝のホームルームで、一限目はオリエンテーションだったはずだ。