祓詞の奏上が始まって、みんなが祝詞を暗唱し始める。
祝詞の文言を確認するものを持ってきていなかったので、気まずい気持ちで俯いた。
そっか、毎朝あるなら、ちゃんと覚えてこないといけないのか。
不安に思いながら揃えて祝詞を誦じるみんなの声に耳を傾ける。
湧き出る清水のような、明け方の霧のような、なんとも言えない清涼感を感じる声のトーン。聞いているだけで、心が洗われていくような心地だ。
やがて長い祝詞奏上が終わると、神職だけの祝詞奏上が始まる。
慶賀くんはふわあ、と一つ大きなあくびをした。
「小一の頃から朝拝に参加させられてるけど、相変わらず退屈な儀式だなあ。巫寿は眠くならないの?」
「えっと、私は初めてだからまだなんとも言えないけれど……でも、みんなすごい綺麗な声で、逆に目が覚めちゃった。なんだか凄くすっきりした気分」
「そりゃあ大祓詞は開運、除霊、心身浄化の祝詞だからね」
さも当たり前のようにそう言った慶賀くん。その隣の来光くんが身を乗り出す。
「大祓詞の効果だよ。この祝詞は簡単に訳すと、神様が僕達の罪や穢れを祓って消し去ってくださる様子を説明しているんだ。だから、言霊は浄化の力を作用させる。巫寿ちゃんがスッキリしたって感じたなら、きっと祝詞の効果だね」
へえ! と目を丸くする。
詞表現演習の教科書にいろんな祝詞が書いていたけれど、どれも難しい漢字に難しい言葉が並んでいて、特に意味があるなんて思わなかった。
けれど、ちゃんと現代語訳すれば一つの物語が描かれているんだ。