清掃はクラス単位で割り振られているらしく、私たちは神楽殿の担当だった。
中学校で放課後にしていた掃除とあまり大差はなく、雑巾を投げて遊ぶ慶賀くんと泰紀くんをくすくすと笑いながら進めていく。
和気あいあいと取り組んでいる中で、ひとり黙々とこちらの様子を気にとめる素振りもなく掃き掃除している男の子がいた。
先程教室で、ずっと本を読んでいた男の子だ。
そういえば嘉正くんが、なにか意味深に首を振っていたのはどういう意味なんだろう。
舞台を雑巾がけしていた嘉正くんに話しかけた。
「嘉正くん、あのもう一人のクラスメイトって……」
「ああ、さっきは自己紹介してなかったもんね。名前は京極《きょうごく》恵生《えい》」
「恵生《えい》くん……」
「恵生は、あんまり輪に入ってこようとしないタイプなんだ。冷たそうに見えるけど、良い奴だよ」
そうなんだ、と相槌を打つ。
教室でちょっとだけ「やな感じだな」と思ってしまったことを反省する。
嘉正くんがそういうんだから、きっといい人に違いない。