「え、えっと、初めまして。椎名巫寿です」
「巫寿な、よろしく!」
「よろしくね、巫寿ちゃん」
ぺこりと頭を下げると、がはがは笑った泰紀くんに背中を勢いよく叩かれた。
順番に挨拶して、自然と視線はもう一人の男の子へと流れる。
「巫寿」
そう言って肩を叩かれて振り返ると、嘉正くんは苦笑いで肩を竦めた。
不思議に思っていると、遠くから除夜の鐘のような鈍い鐘の音が響き渡る。
「あ、予鈴だ」
そう顔を上げた慶賀くんは「みんな行こー!」と教室を飛び出す。
一限目は九時からで今は八時二十分、まだまだ時間は十分にあるはずだけどどこに行くんだろう?
「嘉正くん、これから何かあるの……?」
「ん、これから本殿と社頭の清掃があって、その後に朝拝っていう朝の参拝があるんだ。休みの日以外は毎朝あるよ」
「ほんっとに面倒くさいけど、出ないと罰則あるからね! 気をつけなよ〜?」
そう言った慶賀くんの頭を、泰紀くんがぐりぐりと押さえつけた。
「この学年で一番罰則くらい続けたお前が何言ってんだよ!」
「あーっ! 言ったなコノヤロー! 泰紀だっていっつも俺と罰則食らってるだろーが!」