警察からは、近所の路地裏で倒れていたのを玉じいが見つけて救急車を呼んでくれたと聞いた。
玉じいが見つけた時にはもう周りには誰もいなくて、お兄ちゃんひとりが倒れていたらしい。
低体温と失血が酷く救急車で一度心臓が止まり、病院で必死に治療にあたった結果なんとか一命を取り留めた。
でも、いつ目を覚ますのかは誰にも分からない状況だと、お医者さんから言われた。
それだけ負った怪我が酷かったということだ。
看護師さんに言われるがままに入院の窓口へ赴き、必要な書類に名前を書く。
「お父さんかお母さんと連絡取れる?」
窓口のおじさんにそう尋ねられ、小さく首を振る。
「二人とも、亡くなってます」
言い慣れた言葉はすんなりと出た。
「あ。ごめんね。大変だったね」
申し訳そうなおじさんの表情に、ぎゅっと喉の奥が締まる。腫れぼったい瞼がまた熱を帯びる。
枯れるほど流したはずの涙がまた溢れそうになった。