ドキドキしながら騰蛇を見上げる。


「トウダって、こういう字で書くんだね。騰蛇《のぼるへび》で騰蛇、すごく格好いい」

「恐れ入ります」

「えっと、それで……騰蛇は、本当にそれでいいの?」


特に気にするまでもなく「ええ。もちろんです」と頷いた。


「えっと、じゃあこの"結び"っていうのを作るんだよね?」

「ええ」

「どういうことをするの?……あっ、いけないもう出なきゃ! ごめんね騰蛇、後ででも良い?」

「はい。私は巫寿さまのそばで控えております故、いつでも」


そう言うと騰蛇は静かに目を瞑った。その瞬間、彼女の体全ての輪郭がくにゃりと歪み、やがて空気に溶けて行った。

目を見開いて騰蛇が消えていった場所を凝視する。


「えっ、騰蛇って消えれるの?」

「ええ」


何も無いところからそう返事が帰ってきてぽかんと口を開けた。


禄輪さんから騰蛇を預かってからその姿が見えないなとは思っていたけれど、まさかこうして見えない姿でいたなんて。


「あ、遅刻……!」


はっと我に返り時計を見上げると、待ち合わせの時刻は遠に過ぎている。

慌てて鞄を肩にかけ部屋を飛び出した。