その町では、ブラックホールが本当に近く、空の大半を占めている。恐らくあと一日……半日かもしれない。

 最後。最後か……。彼の言った言葉を反芻する。

「おはよ」

 後方から声がする。

「ごめん、テレビうるさかったよね」
「全くだ」

 やれやれ、と言いたげにため息を零し、狐がテーブルに乗った。こうしてると犬か猫みたいだ。

「あなたはどうやって死にたい?」

 私はなかった。だから聞くと、彼は耳を垂らして頭を振った。

「正直、俺はまだ受け入れられない。死ぬなんて信じたくない……。でも、遠い国ではもう起きてるんだな」
「そうみたい」

 死にたいなんて思ったことない。過去を振り返ると、釣られて色んなことを思い出す。私の思い出は、やっぱりこの町にしかない。

「おはよう」

 声がした方にはももんが立っていた。何の話をしてたの、と弾んだ声で私の隣に座った。