冬休みに入り、外へ出る必要がなくなった私は、ただ茫然と毎日を過ごしていた。
 もうお昼の十三時だというのに、今日もベッドから一歩も動いていない。
 食欲がないという理由で昼食も食べずに、ただスマホで漫画を読んだり動画を観たりして、暇をつぶしている。
 検査の結果を聞いてからずっと、体がだるい。倦怠感が続いている。完全に、気持ちがマイナスな方へ引っ張られている。
 このままではまずいと分かっていながらも、気力がわいてこない。
 うつぶせの状態で枕に頭をつけて、横から景色を眺めていた私の目の前で、ぶぶっとスマホが震えた。
【粋、今日暇? 天音とえりなと集まってランチしない?】
 祥子からのメッセージだった。
 天音がいるなら、行こうかな。このままここでぐずぐずしていてもよくないし。
「行くか……」
 私は重たい体をなんとか起こして、私服に着替えようとクローゼットを開けた。
 このままひとりでいても、よからぬことを考えてしまうだけだし……。
『付き合ってないけど、だとしても何?』
 ふと、八雲の真剣な声が頭の中に降ってきた。
 彼は今、何をして誰と一緒にいるんだろう。
 休みに入ってから全く連絡を取っていないので、全く想像がつかない。
 何度か連絡を取ろうと試みたけれど、どんなメッセージを送ったらいいのか分からなくて、何も送れないままスマホを閉じる日々。
 最近はずっと、彼のことを、できるだけ考えないようにしている。
 このまま八雲のことをもっと知りたいと思ってしまったら、きっと苦しくなるから。
「……よし」
 鏡の前で黒いニットワンピースに着替えた自分を見て、気合を入れる。
 私は荷物を持って、そっと一階に下りた。
 すると、父親と母親が何やらこそこそと話している声が聞こえてきた。
 そうか、今日は水曜だから父親も休みの日だったんだ。
「いったい、いつ言ったらいいのかしら……」
「紀香さん。落ち着いて……」
 ドアのわずかな隙間から見える母親は、顔を両手で覆って泣いている様子だった。
 そんな母親の背中を、父親が優しくさすっている。
 何、いったい何の話……?
 余命宣告以上に私に言いづらいことなんて、ある……?
 ドクンドクンと不安で鼓動が激しくなる心臓を手で押さえながら、私はそっと耳を傾ける。